Description
展覧会タイトルの「物質的想像力」とは、フランスの科学哲学者、ガストン・バシュラール(1884-1962)の著書『水と夢: 物質的想像力試論』の中で物質(マテリアル)を詩学的な視点から論じる際に使われた用語です。人間の心理や文化における水の象徴的な意味を探求する哲学書である本著の中で、バシュラールは主観的認識から幻想性や独創性を取り上げ、多くの人々が深層で共有するイメージの問題として、物質をきっかけにする想像力について論じています。この「物質的想像力」という言葉をもとに、詩学としての芸術について、あるいは個の表現について考察していきます。
こういった視点が作品上で成り立つためには、作者の生の反映として作品を捉え、またその制作を個々の物語を紡ぐ行為として捉えていく必要があります。タイトルにある「縁起」とは、作者のそのような行為であり、それを突き動かす「何か」です。それはまったく個人的であると同時に世界的でもある、名状し難い「何ものか」なのです。
本展は、富山市の中心部から富山湾まで約5 kmに渡る富岩運河沿いにある3つのエリアを船で辿りながら鑑賞します。環水公園や美術館、閘門、伝統的な街並みなどで工芸、現代アート、アール・ブリュットを跨ぐアーティスト26名を紹介します。
水は多くの文化で生命、清浄さ、創造性、変容、無意識などの象徴として認識されています。「物質的想像力」と「水」という概念を頼りに作品を訪ね、内面と目前の外界と関わり、空想と現実の空間が象徴するさまざまな意味を感知する——この展覧会がそのための夢見る世界への扉となるでしょう。